グローバル化が加速する現代において、日本企業が海外市場で成功を収めるためには、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。しかし、多くの日本企業は、従来の組織構造や慣習にとらわれ、海外企業に比べてマーケティング戦略で遅れをとっている現状があります。
この記事では、日本企業が海外で勝つために必要なマーケティング戦略、特に「クロスMBP理論」について解説します。
日本企業のマーケティングにおける課題:セクショナリズムの弊害
多くの日本企業では、製造部門、営業部門、広報部門などの各部門が独立して活動する「セクショナリズム」と呼ばれる組織構造が一般的です。各部門はそれぞれの目標達成に注力するあまり、部門間の連携が不足し、全体最適な戦略が立案・実行できないケースが多く見られます。
例えば、製造部門は高品質な製品開発に注力する一方、営業部門は販売実績の向上を重視し、広報部門はブランドイメージの構築に専念します。このような状況では、各部門の努力が相乗効果を発揮せず、マーケティング活動全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。
特に海外展開においては、セクショナリズムは大きな弊害となります。海外市場のニーズを的確に捉え、効果的なマーケティング戦略を立案・実行するためには、各部門が連携し、一体となって取り組むことが重要です。
海外企業の成功事例:CMOの役割とクロスファンクショナルチーム
海外企業、特にアメリカ企業では、1980年代からCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)という役職が設けられています。CMOはCEO(最高経営責任者)直属の役職であり、マーケティング戦略全体を統括する責任を負います。
イラスト左の様に、アメリカでは社長直轄のCMOを中心に製造部・営業部・広報部を横串で通貫させたマーケティング 戦略が取られてきました。イラスト右の様に、日本では各部門のセクショナリズムが発生しやすい組織形態が中心でした。日本でも2010年代にCMOという役職が導入され始めましたが、2020年における導入実績は約10%程度しか進んでいないのが現状です。(上場企業3700社調査)
CMOは、市場調査、ブランディング、プロモーションなど、マーケティング活動のあらゆる側面を指揮し、各部門の連携を強化することで、全体最適な戦略を推進します。また、CMOを中心に、各部門から選抜されたメンバーで構成されるクロスファンクショナルチームを編成することで、部門間の壁を取り払い、迅速かつ効率的な意思決定を実現しています。
このような組織体制により、海外企業は市場の変化に柔軟に対応し、効果的なマーケティング戦略を展開することで、グローバル市場での成功を収めているのです。
クロスMBP理論:マーケティング、ブランディング、プロモーションの三位一体
日本企業が海外で成功を収めるためには、海外企業の成功事例を参考に、マーケティング戦略を進化させる必要があります。そのための鍵となるのが、クロスMBP理論です。
クロスMBP理論とは、マーケティング(Market research)、ブランディング(Branding)、プロモーション(Promotion)の3つの要素を統合的に捉え、戦略を立案・実行する考え方です。
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マーケティング(M):市場調査とユーザーニーズの把握
海外市場の現状やトレンド、競合他社の動向、消費者のニーズなどを徹底的に調査し、自社の製品やサービスが市場でどのような価値を提供できるかを明確化します。 -
ブランディング(B):他社との違い・自社の強みの明確化
市場調査の結果を踏まえ、自社の製品やサービスの独自性や強みを明確化し、競合他社との差別化を図ります。ターゲット顧客にとって、なぜ自社の製品やサービスを選ぶべきなのか、その理由を明確に示すことが重要です。 -
プロモーション(P):ターゲットに向けた的確な販売促進
明確化されたブランドイメージに基づき、ターゲット顧客に効果的に訴求するプロモーション戦略を立案・実行します。広告、PR、イベント、SNSなど、様々なツールを駆使し、製品やサービスの認知度向上、購買意欲の喚起を図ります。
これらの3つの要素を個別に考えるのではなく、相互に関連付け、三位一体で戦略を推進することで、より効果的なマーケティング活動を実現することができます。
クロスMBP理論の実践:CMOの設置と部門横断的な連携
クロスMBP理論を実践するためには、CMOの設置と部門横断的な連携が重要です。CMOは、マーケティング戦略全体を統括し、各部門の連携を強化することで、クロスMBP理論に基づいた戦略を推進します。
また、部門横断的な連携を促進するためには、各部門から選抜されたメンバーで構成されるクロスファンクショナルチームを編成することが有効です。チームメンバーは、それぞれの専門知識や経験を共有し、協力することで、より効果的なマーケティング戦略を立案・実行することができます。
まとめ:日本企業の海外進出成功への道
日本企業が海外市場で成功を収めるためには、従来のセクショナリズムを打破し、クロスMBP理論に基づいたマーケティング戦略を展開することが不可欠です。CMOの設置やクロスファンクショナルチームの編成など、組織体制の改革にも積極的に取り組むことで、グローバル市場での競争力を強化し、さらなる成長を実現できるでしょう。